“Chic is” 1964年のハーパーズ バザーより

戦後アメリカ社交界の華で、世界で最もエレガントな女性とも言われ、小説家トルーマン・カポーティのスワンであったグロリア・ギネス。(ベストドレッサーとして、ジャッキーケネディに次いで二位に選ばれたと紹介されることが多いけれど、私はグロリアの方が好き。ジャッキーほどグッドガールすぎない彼女のモードなセンスはとても素敵)

グロリアは1963年からハーパーズ バザー誌でコラムの執筆を始めるのだけど、1964年5月号のテーマは「シック」。

chic is BY GLORIA GUINNESS - HARPER'S BAZAAR - 1964

シックとは。よく使われる言葉だけれど、エレガントより稀である。エレガントは自然の賜物であり、猫の散歩のような動作や絵画のような静的なものもあるが、シックは人間的なものである。
シックとはファッションである。シックな人たちは、自分に最もふさわしいものを見出すことを学んだ人たちである。金持ちでも貧乏でも、美人でもそうでなくても、痩せていても太っていてもいい。老いも若きも、黒人も白人も、人種も信条も問わない。しかし、粋な人は皆、繊細で想像力に富んでいる。
知的で創造的、リズム感を持ち、自信と野心に満ちている。シックに自然はない。
(chic is BY GLORIA GUINNESS – HARPER’S BAZAAR – 1964 / 超意訳)

その他シックなものとして、ウィンザー公爵、ジャン・コクトー、ガブリエル・シャネル、マン・レイが撮影したヴァージニア・ウルフ、エルザ・スキャパレリのデザイン画、イサム・ノグチのスケッチ、メンズ仕立てのシャツ、ドットのスカーフ、ミリアム・ハスケルのイヤリングなどをスタイリングしたファッションフォトがコラムと共に紹介されている。

そして、注目すべき(シックな)若者たちとして、作曲家でヴィブラフォン奏者のゲイリー・マクファーランドなどと並び、小澤征爾さんのお姿が。「輝かしい日本のマエストロ、小澤征爾は夏のラビニア音楽祭における新しいディレクターで初のレジデント・コンダクター(専属指揮者)です」と紹介されていました。先日訃報を聞いて、この記事を思い出したので上げておきます。ご冥福を祈ります。

chic is BY GLORIA GUINNESS - HARPER'S BAZAAR - 1964

左端コートを肩にかけているのが小澤征爾氏 / HARPER’S BAZAAR, 1964

chic is BY GLORIA GUINNESS - HARPER'S BAZAAR - 1964

イラストもとても素敵 / HARPER’S BAZAAR, 1964

グロリア・ギネス。ザ・ソーシャライトらしい余裕と貫禄。好き。  by WWD

UK 60年代の雑誌 [3]:最高にスウィンギンでヒップな雑誌〜London Life

一昨年、何がきっかけだったか忘れたけれど、ものすごくクールなイラストを見つけて(クールなんて普段使わない単語だけど、これはそうとしか言いようが無いと思った)、それはイアン・デューリーが描いたものだと知ってかなり興奮して調べまくった時期がありました。

そのイアン・デューリーのイラストを表紙に起用してたのが「London Life」という65年創刊の雑誌。

London Life 1965

London Life誌1965年11月号。イアン・デューリーが描いたトニー・ベネット。via Creative Review

ヴィダル・サスーンやファッションデザイナーのエマニュエル・ウンガロが表紙を飾り、ピーター・ブレイクの特集が組まれ、アラン・オルドリッジがデザインを行い、ミニスカートを最初に着こなしたモデル、ジーン・シュリンプトンがファッションエッセイを担当…といったハイセンスお洒落っぷりだったらしいのです。

London Life

写真左、色黒でいたずらな小僧みたいな顔してるのがヴィダル・サスーン、中央のモデルの手を握っている紳士はエマニュエル・ウンガロ。 via Creative Review

それもそのはず、調べてみたら、創刊者はサンデータイムスの元敏腕編集者。スタッフは、後にいろいろな雑誌やアート本で名前を見かける名物アートディレクターを始め、デザイナー、モデル、写真家、マネージャーと、ロンドンの若い才能が集まったドリームチームだったのでした。

そのためもあって、入手はおろか存在すらが都市伝説なんじゃと思えるほどのレアっぷりです。でもラッキーな事にCreative Reviewというデザイン誌で特集を組んでいたので取り寄せてみました。(しかし眠い。明日に続く)

UK 60年代の雑誌 [2]:Town Magazine「国際諜報局」特集

Town Magazine - April,1965

昨日に引き続きTown Magazine。これは落札しそこねたやつ…

65年4月号はマイケル・ケインの映画「国際諜報局」の特集で表紙はM36を握る女。
レザーのガーターリングをメリケンサック、銃弾、眠らせる楽入り注射器など物騒なアイテムで飾った彼女は二重スパイか手練の殺し屋で、色仕掛けで進めていったミッションも完了まであと一息… みたいな感じですかね。そこに著者レン・デイトンのとぼけ顔の写真を挟んでるところ、抜けが利いてて最高。デザインも素晴らしい!

(一番端のカメラ?起爆装置?みたいな機械、コレもまたそそります!初期007の何が面白かったかって、Qが作るスパイグッズあれこれとか、扉に髪の毛貼付けて侵入者チェックしたりするスパイ工作ですから!クレイグボンドさん&ベンQは十分素敵だし面白いけど、もう少しワクワクするようなスパイツールが登場してくれると良いんだけどな。12月楽しみ。)

UK 60年代の雑誌:Town MagazineとTom Wolsey

eBayに「TOWN」誌の1963年5月号が出品されてた!ずっと探してたやつ。
カバーアートワークはUKポップアートの第一人者、ピーター・ブレイク卿。アートディレクションはTom Wolsey。シビれるね、このカッコいい表紙!

Town magazine May 1963

コンディションはExcellentだけど、送料入れたら140ポンド、25000円くらい? オファーかけても送料タダがいいとこだろうし、もとよりこのお値段じゃ手も足も出ない。なのに何度も眺めてるうちに、表紙だって額に入れれば立派に楽しめるんじゃ?小さな作品買うつもりでどうよ?!って自分に説得かかってた。危ない危ない。
http://www.ebay.com/itm/-/380992109437?roken=cUgayN&soutkn=HCHIht
 


 
TOWN Magazineは50年代からある男性カルチャー誌で、60年中頃〜70年代始め頃の無駄を削いだデザインが特にカッコいい。そのアートディレクターがTom Wolsey。

下は1964年1月号のクリスマス特集。パティ・ボイドのお相手は「イプクレス・ファイル」等スパイ小説の作家レン・デイトン。覗き穴のような円の中のパティちゃんはこっそりウインクしていて何かを企んでるようにも見える。ロマンチックなミステリー小説の1シーンみたいないい表紙。

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Tom Wolseyは60年代に大活躍したアート&エディトリアルのディレクター。コントラストが強い大胆なデザインやタイポグラフィーがとても好み。このセンシュアルなマリー・クワントの広告もウルジー。60sUKの雑誌を見ていてカッコいいデザインだなと思うとトム・ウルジーだったりする。もしデザイン集などお見かけしたらご一報くださると嬉しいです。

Tom Wolsey

Mary Quant - Tom Wolsey