【映画】キャロル・キング ホーム・アゲイン

ずっと見逃していた映画をやっと観ることができた。
キャロル・キングの1973年のライブドキュメンタリー「キャロル・キング ホーム・アゲイン – ライブ・イン・セントラルパーク」。続々と集まる10万人もの観客。口ずさむファンの映像にかぶせるように、ディレクターのルー・アドラーが「人生のサウンドトラックになった」と語ってて、この言葉以上にこのアルバム全てを表せる言葉は無い気がして感動してしまった。それと、ライブは生で観るのがいちばんとは思うけど、スクリーンで観るのは全曲和訳歌詞付きなので、これはこれでいいもんだなと思いました。
(2024-02-09 下高井戸シネマにて)

  1. Beautiful / ビューティフル
  2. Been To Canaan / なつかしきカナン
  3. Way Over Yonder / ウェイ・オーヴァー・ヨンダー
  4. Smackwater Jack / スマックウォーター・ジャック
  5. Home Again / ホーム・アゲイン
  6. Sweet Seasons / スウィート・シーズンズ
  7. It’s Too Late / イッツ・トゥー・レイト
  8. Fantasy Beginning / ファンタジー・ビギニング
  9. You’ve Been Around Too Long / 道
  10. Being At War With Each Other / 愛
  11. That’s How Things Go Down愛の日々をもう一度
  12. Haywood / ヘイウッド
  13. A Quiet Place To Live / クワイエット・プレイス・トゥ・リヴ
  14. You Light Up My Life / ユー・ライト・アップ・マイ・ライフ
  15. Corazón / コラソン
  16. Believe In Humanity / ビリーヴ・イン・ヒューマニティ
  17. Fantasy End / ファンタジー・エンド
  18. You’ve Got A Friend / 君の友だち

https://www.carolekingthemovie.com

“Chic is” 1964年のハーパーズ バザーより

戦後アメリカ社交界の華で、世界で最もエレガントな女性とも言われ、小説家トルーマン・カポーティのスワンであったグロリア・ギネス。(ベストドレッサーとして、ジャッキーケネディに次いで二位に選ばれたと紹介されることが多いけれど、私はグロリアの方が好き。ジャッキーほどグッドガールすぎない彼女のモードなセンスはとても素敵)

グロリアは1963年からハーパーズ バザー誌でコラムの執筆を始めるのだけど、1964年5月号のテーマは「シック」。

chic is BY GLORIA GUINNESS - HARPER'S BAZAAR - 1964

シックとは。よく使われる言葉だけれど、エレガントより稀である。エレガントは自然の賜物であり、猫の散歩のような動作や絵画のような静的なものもあるが、シックは人間的なものである。
シックとはファッションである。シックな人たちは、自分に最もふさわしいものを見出すことを学んだ人たちである。金持ちでも貧乏でも、美人でもそうでなくても、痩せていても太っていてもいい。老いも若きも、黒人も白人も、人種も信条も問わない。しかし、粋な人は皆、繊細で想像力に富んでいる。
知的で創造的、リズム感を持ち、自信と野心に満ちている。シックに自然はない。
(chic is BY GLORIA GUINNESS – HARPER’S BAZAAR – 1964 / 超意訳)

その他シックなものとして、ウィンザー公爵、ジャン・コクトー、ガブリエル・シャネル、マン・レイが撮影したヴァージニア・ウルフ、エルザ・スキャパレリのデザイン画、イサム・ノグチのスケッチ、メンズ仕立てのシャツ、ドットのスカーフ、ミリアム・ハスケルのイヤリングなどをスタイリングしたファッションフォトがコラムと共に紹介されている。

そして、注目すべき(シックな)若者たちとして、作曲家でヴィブラフォン奏者のゲイリー・マクファーランドなどと並び、小澤征爾さんのお姿が。「輝かしい日本のマエストロ、小澤征爾は夏のラビニア音楽祭における新しいディレクターで初のレジデント・コンダクター(専属指揮者)です」と紹介されていました。先日訃報を聞いて、この記事を思い出したので上げておきます。ご冥福を祈ります。

chic is BY GLORIA GUINNESS - HARPER'S BAZAAR - 1964

左端コートを肩にかけているのが小澤征爾氏 / HARPER’S BAZAAR, 1964

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イラストもとても素敵 / HARPER’S BAZAAR, 1964

グロリア・ギネス。ザ・ソーシャライトらしい余裕と貫禄。好き。  by WWD

デヴィッド・ボウイ大回顧展「DAVID BOWIE is」-2

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「DAVID BOWIE is」のあるコーナーにUKポップアート作家エドゥアルド・パオロッツィEduardo Paolozziやアラン・オルドリッジ Alan Aldridgeの作品があった。それだけで「来て良かった感」5割増だったのだけど、ウォーホルの映画ポスターで有名なオルドリッジの「チェルシー・ガールズ」、これがダリの作品から影響を受けていたと知って思わず変な声が出そうになってしまった…!

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サルバドール・ダリの「Drawers of Memory」(1965)。横坐りするトルソーの体が引き出しになっている不思議な絵は、チェルシーガールズほど寓意に満ちた禍々しさはないものの、薄暗い影のある感覚は確かに似てる。展示ではJ.G.バラードの小説のカバーアートとして展示されてた。

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小説表紙だからオルドリッジの目に触れた?その辺は説明が全く無いから今のところ不明。(ボウイともどういう関係で展示されてたのか記憶が曖昧で、展覧会目録買わずに帰ってきてしまったのを激しく後悔中…)

ただ、帰宅後調べて見たら、バラードの短編集「残虐行為展覧会」も翻訳版は違う表紙になっていたけど、その原題「Atrocity Exhibition」はジョイ・ディヴィジョンの曲名だったと知っちゃ読まないわけには。「チェルシー・ガールズ」だって初めて知ったのはFeltの2ndアルバムだった。好きなものがどんどん繋がっていく興奮って最高。次回ボウイ展行った時もこういう発見がありそうでワクワクしてる。

デヴィッド・ボウイ大回顧展「DAVID BOWIE is」-1

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「DAVID BOWIE is」観てきた。内容の濃さに圧倒。2時間では1/3くらいしか見られず、後半は駆け足になってしまった。でも展示前半のDAVID BOWIEというスターが生まれた時代、何にインスピレーションを受けてたのかは特に面白かった。

ボウイの楽曲資料や衣装以外にギルバート&ジョージやアラン・オルドリッジ、ソニア・ドローネ等も紹介される充実ぶり!去年ボウイのオークション見ても思ったけどボウイの好奇心、アンテナの幅広さがそもそもすごい。でもそれをキッチリ押さえたV&Aの底力見た感じ。素晴らしかった

衣装はただただうっとりと眺めるばかり。
こんな細くて薄い体であのビジュアルだなんて、もうこの世のものには見えなかったと思う…!!それにステージ衣装なのにあのコンディションの良さはすごい。もう一度行ってゆっくりじっくり鑑賞したい。

でも今日いちばんのハイライトは、グラム時代、化粧したボウイが「塗った口紅を押さえたティッシュ」。

後は「DAVID BOWIE is」これから行く方へ参考までにメモ。ライブやインタまでしっかり見るには5時間くらい必要かと思う。あと、展示品説明の日本語がわかりにくく読むのに時間食います。今日は入口エレベーター1機のみ、ヘッドフォン配る捌きも上手くないので大行列。チケ購入済なのに着いてから閲覧スタートまで20分程かかりました。

(補足…。5時間というのは、衣装を縫目まで眺めたり、デヴィッド・ボウイもジミヘンを見たと紹介付で67年サビル・シアターのポスターがあって、よく見たら9月にはジョージィ・フェイムもライブ予定だったのか…などとやらしく観てるとそれくらいかかるという参考です…)

UK 60年代の雑誌 [4]:その雑誌にバカラックは曲を贈った〜London Life

前回の続き。

London Life誌のマネージメントはThe Lord Puttnam/デヴィッド・パットナム氏の担当でした。(氏は後に「小さな恋のメロディ」や「ダウンタウン物語」「炎のランナー」などの映画プロデューサーとして活躍します。あのロジャー・ダルトリーの迷作「リストマニア』も!)

創刊時、パットナム弱冠24歳。血気盛んなロンドンっ子はどうしたら新雑誌を宣伝できるか考えたあげく、なんと、バート・バカラックに曲を作ってくれないかと話を持ちかけたのでした。若さってすごい。それがこれ「London Life 」。

Anita Harris – London Life

この時の面白いエピソードがCreative Reviewに載っていました。
パットナムはバカラックを訪ねる際、お供としてジーン・シュリンプトンを連れて行ったそうです。パットナム曰く、バート・バカラックは僕に会うより彼女に会う方に興味津々だったよとの事。そりゃあそうだろう!元々モデルとして大人気大活躍中であったし、65年、巷は公の場にナマ足ミニスカートなんて格好で登場した彼女の噂で持ち切りだったのだから。

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65年のジーン・シュリンプトン嬢。見よこの美貌!この美しいおみ足!

それが功を奏したのか、バカラックは若者の提案に同意。曲はラジオで宣伝を流し続けますが、広告費はゼロです。作戦は大成功を納めたのでした。

バカラックのディスコグラフィーを見てみると、この65年から英国シンガーへの曲提供が急増したようですね。トム・ジョーンズ、マンフレッドマン、クリフ・リチャード。翌年シラ・ブラックやダスティら英国が誇る歌姫たち。

だからバカラックもこれからのロンドンライフに浮かれて、このオファーを軽いノリで受けたのかもしれませんが、まあそれにしても、バカラック御大(当時37歳)も鼻の下伸ばす事があるのかと思うと楽しいですな!

それに、これからジーン・シュリンプトンを「一番最初にミニスカートを着用した」「60s UKを代表するモデル」で「デヴィッド・ベイリー、テレンス・スタンプの恋人だった」に「バカラックをワクワクさせた」を追加しようと思います。

My Little Red Book – Manfred Mann (Film Version) – 1965
(マンフレッドマン最高!!)